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SAPによる経営管理とは、会計・販売・生産といった業務データを一つの基盤に集約し、業績や採算をリアルタイムに把握して意思決定につなげる仕組みです。 

一方で、「月次の締めを待たないと数字が固まらない」「拠点や部門ごとにデータが分かれていて、集計に時間がかかる」といった課題を抱える企業は少なくありません。 

本記事では、SAPの導入で経営管理がどう変わるのか、それを支える機能、導入企業に生まれた効果、高度化の進め方までを解説します。経営管理の高度化や基幹システムの刷新を検討している、中堅企業の経営層・経営企画部のご担当者様は、ぜひ参考にしてください。 

中堅企業のDX・基幹システム検討の考え方を日経BP記事で紹介 

日経BP総合研究所によるインタビュー「DXの伴走者2025」で、中堅成長企業が基幹システムの検討を早期に始める重要性と、上流から下流まで一気通貫で支援するIPSの方針を紹介しています。 

経営管理とは|SAPとの関係を整理する 

経営管理とは、経営計画の策定や予実管理、原価・損益の管理、グループ会社の業績管理など、経営判断のために数字を把握し統制する一連の活動です。これらの数字の発生源は、受注・購買・生産・会計といった日々の業務にあります。 

その業務データを記録する基幹システムがERP(統合基幹システム)であり、世界で広く使われている代表的な製品を提供しているのがSAP社です。つまりSAPは、経営管理に使う数字が生まれる場所そのものを支える存在だといえます。 

なお、SAP社の概要やERPの基本的な仕組みは、「SAPとは?SAPシステムの特徴とメリット・注意点をわかりやすく解説」の記事で詳しく解説しています。 

経営管理でやるべきこと|計画・予実・原価・グループ管理 

経営管理の主な業務範囲は、以下のとおりです。 

  • 経営計画・予算の策定: 中期計画や年度予算を立て、目指す数字を定める 
  • 予実管理: 計画と実績の差異を把握し、打ち手につなげる 
  • 原価・損益の管理: 製品別・取引先別の採算を把握し、収益性を高める 
  • グループ会社・拠点の業績管理: 拠点や子会社を横断して業績を把握する 
  • 経営層へのレポーティング: 経営会議や取締役会に向けて数字を整理・報告する 

自社ではどの業務をどこまでタイムリーにできているか、照らし合わせながら読み進めてみてください。 

経営管理が難しくなる理由|データの分散と集計のタイムラグ 

多くの中堅企業では、経営管理の実務が表計算ソフトへの手作業の集計に支えられています。その背景には、次のような構造的な課題があります。 

  • システムの分断: 会計・販売・生産のシステムが独立して運用されており、データの定義や粒度がそろわない 
  • 集計のタイムラグ: 月次決算の締めが終わるまで、製品別・取引先別の損益が固まらない 
  • グループ・海外拠点の仕組みの違い: 拠点ごとにシステムやコード体系が異なり、横断的な集計に時間がかかる 

いずれも担当者の努力ではなく、データ基盤の構造に起因する課題です。だからこそ、経営管理の高度化は仕組みから見直す必要があります。 

SAPで経営管理はどう変わるのか 

SAPの導入によって経営管理がどう変わるのかを、これまでの姿と対比しながら整理します。

経営管理の場面これまでの経営管理SAP導入後の経営管理
業績の把握月次決算の締め後に判明する取引の発生と同時に集計され、日々確認できる
データの集計部門ごとのシステムから手作業で転記する業務データと会計データが同一基盤に記録される
原価・損益の管理製品別・取引先別の採算が締め後にしか分からない製品別・取引先別の採算をタイムリーに把握できる
グループ・海外拠点の管理拠点ごとに仕組みが異なり集計に時間がかかる同じ仕組み・コード体系で拠点横断の業績を把握できる

それぞれの変化を詳しく見ていきます。

業務データと会計データが一体で記録される

SAPの本質的な特徴は、業務の記録と会計の記録が一体になっている点です。受注や出荷、購買などの取引が入力されると、その瞬間に会計・原価のデータとして同じ基盤に反映されます。

このため、部門ごとのシステムからデータを集めて転記し、突き合わせるという集計作業そのものがなくなります。部門によって数字がずれる、集計のたびに数字が変わるといった問題も、構造的に解消されていきます。

月次の締めを待たずに業績を把握できる

これまでの経営管理では、月次決算の締めを終えてから経営会議で「先月の数字」を振り返るのが一般的でした。数字が固まるまでのタイムラグが、そのまま経営判断の遅れにつながっていたといえます。

SAPでは取引の発生と同時にデータが集計されるため、売上・原価・利益の状況を日々把握できます。採算が悪化した製品への対応や価格改定といった判断を、締めを待たずに始められることが大きな変化です。

グループ会社・海外拠点を同じ仕組みで管理できる

SAPは多言語・多通貨や各国の法制度・商習慣への対応を標準で備えています。国内外の拠点やグループ会社を同じ仕組み・同じコード体系で管理できるため、拠点を横断した業績の比較や、連結ベースでの業績把握が早まります。

海外拠点を持つ中堅企業にとっては、グループ全体の数字を一つの基盤でそろえられることが、経営管理を高度化するうえでの大きな強みになります。

経営管理を支えるSAPの主な機能

ここでは、経営管理を支えるSAPの機能を、経営管理の場面に対応させて3つに絞って紹介します。

会計・原価をリアルタイムに集計する管理会計機能

SAPには、外部報告用の会計を担う財務会計と、社内の意思決定に使う管理会計の機能が備わっています。日々の業務データと直結しているため、製品別・部門別・プロジェクト別の原価や損益がリアルタイムに集計されます。

経営層にとっては、「どの製品が、どの取引先が、どれだけ利益を生んでいるか」という経営判断の基礎となる数字を、いつでも同じ基準で確認できることが価値になります。

経営計画・予実管理を支える計画・分析機能

経営計画や予算編成には、計画と分析を同じ基盤で行える「SAP Analytics Cloud」などの計画・分析ソリューションが活用できます。

実績データと同じ基盤の上で計画を立てられるため、予実の差異をタイムリーに把握し、見通しの修正まで素早くつなげられます。年度予算を作って終わりではなく、計画を回し続ける経営管理への転換を支える機能です。

経営ダッシュボードとAIによる意思決定支援

「SAP S/4HANA Cloud」では、標準UI「SAP Fiori」により、経営層・部門責任者といった役割に応じたダッシュボードを利用できます。会議のための資料を待たなくても、必要な数字に自分でアクセスできる環境が整います。

さらに、SAPの生成AIアシスタント「Joule」がSAP S/4HANA Cloudで利用でき、自然な対話によるデータの確認・分析支援など、意思決定を支える機能の進化が続いています。

SAP導入後の経営管理で得られる効果|導入企業の例

SAPによる経営管理の高度化は、具体的にどのような効果につながるのでしょう。ここでは3つの効果を、導入企業の例とあわせて紹介します。

意思決定のスピードと精度が上がる

全社のデータが一元化されると、経営層と現場が同じ数字を見て議論できるようになります。会議のたびに資料の作成を待つ必要がなく、数字のずれを確認し合う時間も減ります。

判断の根拠が共通のデータになることで、経験と勘への依存が下がり、意思決定のスピードと精度の両方が高まります。数字の集計や調整に費やしていた時間を、打ち手の検討に振り向けられることも大きな効果です。

原価・損益の可視化が収益改善につながる

製品別・取引先別の採算が見えるようになると、不採算の発見や価格改定、撤退の判断が早まります。原価の見える化は、そのまま収益改善の打ち手に直結します。

株式会社アイ・ピー・エス(以下、IPS)がご支援した萩原工業様では、標準原価による目標管理の仕組みを構築し、導入から2カ月後に経常利益の約3割に相当する不採算製品を発見しました。見えていなかった採算の実態が明らかになり、全社で価格競争力を高める取り組みにつながった事例です。

決算・レポーティングが早くなる

グループのデータが同じ基盤にそろうと、決算や報告のための集計作業が大幅に短縮されます。経営層がより早く数字を手にできるだけでなく、管理部門の負担軽減にもつながります。

IPSがご支援した東レインターナショナル様では、決算処理にかかる期間が3日から半日へと短縮されました。グループ決算の早期化という経営課題に、データ基盤の整備で応えた事例です。

【動画】中堅成長企業のIT活用による業務改革事例

中堅成長企業における基幹システムの現状と課題を整理し、IT活用による業務改善に成功した導入事例を3点紹介する動画です。

SAPで経営管理を高度化する進め方と成功のポイント

SAPによる経営管理の高度化を成功させるには、システムの導入自体を目的にしないことが重要です。ここでは、経営層が押さえるべき4つのポイントを紹介します。

経営視点で導入の目的・検討方針を明確にする

最初に取り組むべきことは、なぜやるのか・何を目指すのか・どのように実現するのかを、経営視点で明確にすることです。経営層自らがオーナーとなり、解決すべき経営課題と成果指標(KPI)を定めます。

そのうえで、どの数字を・誰が・どの頻度で見て・何を判断するのかから逆算して、経営管理の仕組みを設計します。目的が曖昧なまま機能の検討から入ると、導入しても効果的に使われない仕組みになりかねません。

業務とデータを標準化する(Fit to Standard)

経営管理の精度は、全社でデータの定義と業務プロセスがそろっているかどうかで決まります。SAPには25業種以上に対応するベストプラクティス(標準的な業務プロセスのひな形)が用意されており、標準機能に業務を合わせる、SAPが推奨する「Fit to Standard」を基本とすることで、経営管理に使える一貫したデータが日々の業務から生まれるようになります。

このとき、すべての業務を一律に標準化するのではなく、競争優位につながる業務と標準化できる業務を切り分けることが重要です。購買・在庫管理・会計処理などは標準機能を活用し、自社の競争力の源泉となる業務は必要に応じて最適化を検討します。

導入体制の構築

経営管理の仕組みづくりは、システム部門や管理部門だけに任せず、数字を使う当事者である経営層が主導することが成功の前提です。経営層・システム部門・業務部門が一体となり、各部門のキーパーソンが早い段階から参画する体制を整えます。

要件を決める際、現場の意見を反映しないと実際の業務に合わず、効果的に使われない仕組みになってしまう可能性があります。一方で、現場の要望をそのまますべて取り入れると業務の標準化が進まず、SAPのメリットを十分に活かせません。経営が目指す業務や経営基盤の姿を明確にしたうえで、現場の意見も取り入れながら全体最適の視点で要件を決めることが重要です。

現場からの反発が生じた場合は、経営層が全体最適の視点から説得し、時にはトップダウンで変革を進めます。稼働後も見るべき指標を見直しながら使い続け、仕組みを定着させていきます。

自社に最適なSAPコンサル(パートナー)の選定

SAPによる経営管理の高度化には、標準機能を最大限に活用しながら、自社の業務に最適な形へ落とし込む高度な知見が求められます。パートナーを選ぶ際は、以下の3点を確認することが重要です。

  • 同規模・同業種のSAP導入実績が豊富か: 自社と近い規模・業種での経験は、課題の理解と提案の精度に直結する
  • 業務改革の視点をもち、標準機能の活用を推奨してくれるか: 言われたとおりに作り込むのではなく、標準化による経営効果まで見据えて導いてくれるか
  • 導入後の保守・運用サポート体制が充実しているか: 稼働後の定着・改善まで伴走できる体制があるか

IPSは、1997年からSAP専業として、180社を超える導入を支援してきました。GROW with SAPの立ち上げ初期に日本でいち早く認定を取得し、早期からクラウドERP導入に取り組んできました。独自の包括的なナレッジベース「EasyOne」を活用した導入に加え、SAPグローバルパートナーアライアンス「UNITED VARS」の日本代表企業として培ったグローバル対応力を強みに、中堅の製造業・商社・卸売業を中心に支援しています。IPSのSAP導入事例もあわせてご覧ください。

まとめ|SAPの経営管理で「数字で判断できる経営」へ

本記事の要点を整理します。

  • 経営管理の数字の発生源は、受注・購買・生産・会計といった日々の業務データにある
  • SAPは業務データと会計データを一体で記録し、月次の締めを待たずに業績を把握できる
  • 導入企業では、原価・損益の可視化による収益改善や、決算・レポーティングの早期化といった効果が生まれている
  • 進め方の柱は、経営課題と目的の明確化、Fit to Standardによる標準化、経営層が主導する体制の構築、パートナーの選定である

SAP導入の真の成功は、システムが稼働することではありません。標準機能を定着・活用し、経営判断の高度化や収益性の向上といった企業価値の創出につなげることこそが、本当のゴールです。その第一歩として、まず自社の経営管理で「見えていない数字」がどこにあるのかを棚卸しすることから始めてみてください。

1997年からSAP専業・180社以上の導入実績を持つIPSが、貴社の課題やご状況に合わせて経営管理の高度化に最適な進め方をご提案します。SAPによる経営管理については、以下よりお気軽にご相談ください。

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