SAPコンサル企業とは、SAP社が提供するERP(統合基幹システム)の導入・移行・活用を専門に支援するコンサルティング企業です。SAP導入は会計・販売・生産といった基幹業務の全体に関わるため、どの企業に支援を依頼するかがプロジェクトの成否を大きく左右します。
一方で、支援会社の種類や特徴の違いはわかりにくく、何を基準に選べばよいか悩むご担当者様も少なくありません。
本記事では、SAPコンサル企業の種類と依頼できる支援範囲、選び方の5つの評価ポイント、費用の考え方までを解説します。SAP導入や移行の依頼先を検討する、中堅企業の情報システム部・経営企画部のご担当者様に向けた内容です。

IPSのサービス・導入実績をまとめた資料
1997年からSAP専業として180社を超える導入を支援してきたIPSのサービス内容と
実績を紹介しています。パートナー選びの参考にご活用ください。
SAPコンサル企業とは|依頼できる支援範囲
SAPコンサル企業は、SAP製品の導入や移行、稼働後の活用を専門に支援する企業を指します。役割はシステムを技術的に構築することにとどまりません。
SAP導入は業務プロセスそのものを見直す取り組みであるため、業務の設計や改革まで踏み込んで伴走することが、SAPコンサル企業に期待される本来の価値です。まずは、どのような専門家が、どの範囲を支援してくれるのかを整理します。
SAPコンサルタントの主な役割
SAPコンサル企業には、SAP製品と業務知識の両方に通じたSAPコンサルタントが在籍しています。依頼する企業から見ると、その役割は大きく3つに整理できます。
- 要件の整理: 経営課題や業務の現状を整理し、システムに求める要件へ落とし込む
- 標準機能の適用設計: 会計・販売・生産といった業務領域ごとの専門知識に基づき、SAPの標準機能を業務へ適用する
- プロジェクトの推進支援: 部門をまたぐプロジェクト全体の推進を支え、稼働後の定着まで導く
近年のクラウドERPでは、従来のようなプログラム開発のスキルよりも、標準機能を最大限に活用しながら自社の業務に最適な形へ落とし込む知見の重要性が高まっています。
そのため、支援を依頼する側から見ても、パートナーには次の4点の知見が求められます。
- SAP製品に関する専門知識: 標準機能を活用し、業務に最適な形へ落とし込む知見
- 業務プロセスの理解: 業界や業務の実態を踏まえた要件整理力
- プロジェクト推進の経験: 部門をまたぐ合意形成とスケジュール管理の実行力
- 豊富な導入実績: 多様な企業を支援して蓄積された実践的なノウハウ
SAPコンサル企業に依頼できる支援の範囲
SAP導入のプロジェクトは、構想策定から始まり、要件定義、システム設定、データ移行、テスト、ユーザー教育という流れで進みます。SAPコンサル企業には、これらの各工程に加えて、稼働後の運用保守や活用支援まで依頼することができます。
ただし、どの工程まで対応できるかは企業によって異なります。上流の構想策定を得意とする企業もあれば、構築工程を中心とする企業もあります。上流から稼働後までの対応力は、後述する評価ポイントにも直結します。SAP導入全体の流れや期間の目安については、SAP導入の進め方を解説した記事で詳しく紹介しています。
SAPコンサル企業の種類と特徴

SAPコンサルティングを提供する企業は、成り立ちや得意領域によって、大きく3つの種類に分けられます。
総合系コンサルティングファーム、SAP専業のコンサルティング企業、SIer(システムインテグレーター)系の企業です。それぞれの特徴と向いている企業像を、以下の表に整理します。
| 種類 | 特徴 | 向いている企業 |
| 総合系コンサルティングファーム | 経営戦略の立案からIT導入まで幅広く支援。大規模プロジェクトの体制構築力がある | グローバル展開する大企業、経営改革と一体で進めたい企業 |
| SAP専業のコンサルティング企業 | SAP領域に特化した専門性と導入ノウハウの蓄積。業種・規模に応じた伴走支援が受けやすい | SAPの専門性を重視し、構想・業務改革から導入・移行まで進めたい企業 |
| SIer(システムインテグレーター)系 | システム開発やインフラを含む総合的なIT支援。周辺システムとの連携開発まで任せやすい | 既存システムとの連携が多い企業、開発を含めて依頼したい企業 |
総合系コンサルティングファーム
総合系コンサルティングファームは、経営戦略や業務改革の上流工程からIT導入までを一体で支援する企業です。大規模なプロジェクトの体制を構築する力があり、グローバル展開を含む全社変革と合わせてSAP導入を進めたい場合に適しています。一方で、プロジェクトの規模や体制が大きくなりやすい傾向があります。自社の規模や予算とのバランスを見極めることが重要です。
SAP専業のコンサルティング企業
SAP専業のコンサルティング企業は、SAPを中心としたERP領域に特化してサービスを提供する企業です。SAP導入・移行の豊富な経験に加え、業務改革や業務設計、ERP導入構想などの上流工程から支援する企業もあります。特に、SAPを前提とした業務プロセスの見直しやFit to Standardなど、SAPに関する専門的な意思決定を支援できる点が強みです。中堅企業の場合は、自社と同規模・同業種の導入実績や、プロジェクトの体制・支援範囲を確認したうえで、自社に適した企業を選ぶことが重要です。
SIer(システムインテグレーター)系の企業
SIer系の企業は、システム開発やインフラ構築を主体とするIT企業です。SAPと周辺システムとの連携開発まで含めて依頼しやすく、既存のIT資産との統合を重視する企業に適しています。一方で、業務プロセス改革をどこまでリードできるかは、各社のコンサルティング体制によって差があります。開発力に加えて、業務側の支援体制も確認しておくと安心です。
SAPパートナー制度から見る信頼性の見極め方
依頼先の専門性や実績を客観的に確認する材料として、SAP社の公式パートナー制度が役立ちます。
SAP社は、製品の販売や導入支援を行う企業をパートナーとして認定しており、コンサルティングおよび導入を担うパートナーもこの制度に含まれます。
SAP社の認定を受けているかどうかは、依頼先を絞り込む際の出発点になります。
パートナー企業の状況は、SAP公式サイトのパートナー検索ページで確認することができます(2026年8月時点)。コンサルティングおよび導入を担うパートナーなど、支援内容の区分ごとに検索できるほか、日本国内のパートナー一覧も同じページから確認できます。
候補となる企業がSAP社の認定を受けているか、どのような領域を得意としているかを調べる際に有効です。
また、SAP社は個人の専門性を証明するSAP認定コンサルタント資格を設けています。資格を持つコンサルタントがどの程度在籍しているかは、その企業の専門性の厚みを示す指標のひとつです。
候補企業との面談時に、有資格者の在籍状況やプロジェクトへの参画体制を確認するとよいでしょう。
SAPコンサル企業の選び方|5つの評価ポイント

ここからは、依頼先を見極めるための5つの評価ポイントを解説します。
特定の企業名の比較ではなく、どの種類の企業を検討する場合でも使える共通の評価軸です。自社の状況に当てはめながら、候補企業を確認してください。
自社と近い業種・規模での導入実績があるか
導入実績は、件数の多さだけでなく「自社と近い業種・規模での実績」に注目することが重要です。
業種特有の業務プロセスや商習慣への理解があるかどうかで、要件整理の精度と導入のスピードは大きく変わります。
公開されている導入事例を確認し、相談の場では自社と近い企業をどのように支援したかを具体的に質問してみてください。
標準機能に業務を合わせるFit to Standardのノウハウがあるか
SAPが推奨する導入の考え方に、標準機能に業務を合わせる「Fit to Standard」があります。アドオン(追加開発)に頼らず標準機能を軸に業務を見直すことで、システムをクリーンに保ち、将来のアップデートにも対応しやすくなります。
SAPには25業種以上のベストプラクティス(業務の標準的な進め方)が用意されており、これを活かせるかどうかはパートナーの力量に依存します。
要望をそのまま追加開発で受けるのではなく、標準機能での実現方法を提案してくれる企業を選ぶことが大切です。
クラウドERP(SAP S/4HANA Cloud)の構築実績が豊富か
現在のSAP S/4HANA Cloudは、SAP Cloud ERP(パブリック型クラウド)とSAP Cloud ERP Private(プライベート型クラウド)という2つのクラウド形態で提供されています。
そのため、これから導入するのであれば、クラウドERPを前提とした構築実績が豊富かどうかが重要な評価軸になります。
オンプレミス時代の経験だけでなく、クラウドERPをゼロベースで構築した実績があるかを確認してください。
構想策定から運用保守まで一貫して支援できるか
SAP導入の効果は、稼働後の定着と活用によって決まります。
構想策定や要件定義といった上流工程から、稼働後の運用保守・活用支援まで、一貫して対応できる体制かを確認することが重要です。工程ごとに依頼先が分かれると、責任範囲が分断され、引き継ぎのロスや認識のずれが生じやすくなります。導入後の保守・運用サポート体制が充実しているかも、あわせて確認したいポイントです。
業務プロセスの再設計をリードできるか
SAP導入は、単なるシステムの入れ替えではなく、業務を見直す機会でもあります。
経営課題の解決につながる業務プロセスの再設計をリードできるかは、パートナー選定における重要な評価軸の一つです。
システムの操作説明や設定だけにとどまらず、SAP標準を踏まえたあるべき業務の姿を提案し、部門をまたぐ社内の合意形成まで支援してくれるかを確認しましょう。
業務改革とシステム導入を一体で進められるパートナーを選ぶことで、SAP導入の効果をより高めることができます。
最後に、5つの評価ポイントを候補企業に確認する際の質問例とあわせて整理します。
- 業種・規模の近い実績: 自社と近い業種・規模の支援事例を教えてもらえるか
- Fit to Standardのノウハウ: 追加開発を求めた場合に、標準機能での代替案も提案してくれるか
- クラウドERPの構築実績: クラウドERPをゼロベースで構築した実績があるか
- 一貫した支援体制: 構想策定から運用保守まで、どの工程を自社で担えるか
- 業務改革のリード力: 業務プロセスの見直しをどこまで主導してくれるか

日経BPに掲載|IPS社長が語る「中堅企業のERP導入」
日経BPのインタビュー記事で、IPS社長が中堅成長企業のERP導入における課題と、
IPSが目指す支援の姿を語っています。パートナー選びの視点としてご覧ください。
SAPコンサル費用の考え方と見積もり時の確認ポイント

SAPコンサルティングの費用は、支援範囲・プロジェクト体制・期間によって決まります。どの工程から支援を受けるか、何名のコンサルタントがどの程度の期間参画するかで金額は大きく変わるため、一律の相場を示すことは難しく、個別の見積もりが前提になります。金額の大小だけで比較するのではなく、費用の内訳と前提条件を理解することが重要です。
複数社の見積もりを比較する際は、次の4点を確認してください。
- 支援範囲の明確さ: どの工程のどの作業までが見積もりに含まれているか
- 前提条件: 対象の業務範囲・拠点数・体制など、金額の前提が明記されているか
- 追加費用の条件: 要件の追加や期間の延長時に、どのような費用が発生するか
- 稼働後の費用: 保守・運用サポートの体制と費用がどう設定されているか
なお、システム自体の費用については、選択する製品・導入形態によって異なります。クラウド型では自社でサーバーや基盤環境を保有・構築する必要がないため、インフラに関する初期投資や運用負荷を大幅に軽減することが可能です。
また、サブスクリプションモデルによって費用を分散できるため、初期投資の負担を抑えつつ、柔軟な投資計画を立てることができます。
その結果、中堅・中小企業にとっても手の届きやすい、現実的な選択肢として広がっています。
SAPコンサル企業への依頼を成功させるポイント

依頼先の選定と同じくらい、依頼する側の準備がプロジェクトの成否を左右します。優れたパートナーを選んでも、自社の体制が整っていなければ効果は十分に発揮されません。
ここでは、依頼前に押さえておきたい2つのポイントを解説します。
導入目的と社内の推進体制を先に固める
SAP導入をコンサル企業へ丸投げすると、現場の実態に合わないシステムになりがちです。依頼前に、経営層自らがオーナーとなり、解決すべき経営課題と導入の目的を明確にしておくことが出発点になります。
そのうえで、経営層・IT部門・現場が一体となった推進体制を整え、改善意欲のある社員を中心にプロジェクトへ参画させることが望ましいといえます。
要件を決める際は、現場の意見を反映しないと実際の業務に合わないシステムになる一方、現場の要望をすべて取り入れると業務の標準化が進まず、SAPのメリットを十分に活かせません。
経営が目指す業務や経営基盤の姿を明確にしたうえで、現場の意見も取り入れながら、全体最適の視点で要件を決めることが重要です。競争優位につながる業務と標準化できる業務を切り分ける方針を自社側で持っておくと、パートナーとの議論も円滑になります。
SAP導入は「早めの相談」が成功の第一歩
依頼のタイミングも重要なポイントです。現在、SAP ERP 6.0(ECC 6.0)の標準サポートが2027年末に終了する「SAP 2027年問題」(2026年8月時点)を背景に、SAP S/4HANAへの移行需要が集中しています。経験豊富なコンサルタントの確保は、業界全体で年々難しくなりつつあります。
希望するスケジュールでプロジェクトを進めるためには、方針が固まりきる前の検討段階から、パートナー候補へ相談を始めることが有効です。早い段階で相談すれば、進め方や体制づくりについての助言を得ながら、無理のない計画を立てることができます。2027年問題の詳細と対応の進め方は、SAP 2027年問題を解説した記事で紹介しています。
SAP専業のコンサルティング企業IPSの支援体制

IPSは、1997年からSAP専業として、180社を超える導入を支援してきました。GROW with SAPの立ち上げ初期に日本でいち早く認定を取得し、早期からクラウドERP導入に取り組んできました。独自の包括的なナレッジベース「EasyOne」を活用した導入に加え、SAPのグローバルパートナーアライアンス「UNITED VARS」の日本代表企業として培ったグローバル対応力を強みに、中堅の製造業・商社・卸売業を中心に支援しています。
本記事で解説した評価ポイントである、業種・規模の近い実績、標準機能を軸とした導入ノウハウ、クラウドERPの構築実績、構想策定から運用保守までの一貫支援は、いずれもIPSが強みとしてきた領域です。IPSがご支援したニチバン様では、標準機能とテンプレートを徹底的に活用し、約1年で全社の業務システムを刷新しました。また、三和スクリーン銘板様では、老朽化したスクラッチ開発の基幹システムをクラウドERPへ刷新し、2023年に本稼働を迎えています。
そのほかの支援内容や事例は、IPSのSAPコンサルティング・導入支援サービスおよびSAP導入事例の一覧でご覧いただけます。
まとめ|自社に合うSAPコンサル企業を選ぶために
SAPコンサル企業には、総合系コンサルティングファーム、SAP専業のコンサルティング企業、SIer系の企業という3つの種類があり、それぞれ得意領域が異なります。依頼先を見極める際は、SAP公式のパートナー制度や認定資格を客観的な材料としつつ、次の5つの評価ポイントで確認することが有効です。
- 自社と近い業種・規模での導入実績があるか
- 標準機能に業務を合わせるFit to Standardのノウハウがあるか
- クラウドERP(SAP S/4HANA Cloud)の構築実績が豊富か
- 構想策定から運用保守まで一貫して支援できるか
- 業務プロセスの再設計をリードできるか
あわせて、依頼する側でも導入目的と推進体制を先に固め、早めに相談を始めることが成功への近道です。候補企業との対話を通じて、自社の業種や規模への理解度と、業務改革まで踏み込む姿勢を確かめてください。
IPSは、1997年からSAP専業として180社を超える導入を支援してきました。貴社の業種や規模、検討状況にあわせて、最適な進め方をご提案します。SAPコンサル企業の選び方や導入の進め方についてのご相談は、以下よりお気軽にお問い合わせください。
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